5月7日午後、学長室にて柳本雄司全学同窓会相談役を進行役として、髙橋姿新潟大学長、多和田孝雄全学同窓会長による座談会が開催されました。1時間余りに渡って多岐の話題について有意義な意見交換が行われました。その一部を抜粋して掲載いたします。

(発言者の敬称略)

柳 本:まずは全学同窓会の10年を振り返りましょう。

多和田:平成15年の秋、大学の法人化の直前ですが、各学部の同窓会長が集まり、全学的な同窓会組織の創設に向けての議論がはじまりました。私は歯学部の同窓会長代理、柳本さんは人文・法・経済学部の同窓会長として、全学同窓会の創設に携わりました。

柳 本:当時、国立大学法人の評価にとって全学的な同窓会の応援も対象になるとのことで、全学同窓会創設の要望が大学側からありました。しかし、それぞれの学部同窓会は設立の時期や目的も異なりますから、利害調整、合意形成を図る苦労がありました。

多和田:いろいろ議論もし、紛糾もありました。とくに運営費、つまり同窓会費の徴収方法では意見が対立しました。ようやく各学部の同窓会が応分の分担金を拠出するルールに落ち着き、平成16年4月から全学同窓会連絡協議会が発足しました。4月17日に設立総会を盛大に行いました。

柳 本:2年間の連絡協議会を経て、平成18年4月に全学同窓会へと移行し、この4月で10年目を迎えました。

多和田:この10年間で立ち上げた事業は、全学同窓会と大学の懇談会、同じく交流会、広報紙「雪華」、雪華支援事業、新潟大学カード、そして最近はメールマガジン、新しい支部の設立支援(佐渡支部と沖縄支部)、転職・Uターン組を主な対象とする求人情報の提供などが挙げられます。

柳 本:全学同窓会が組織されてよかったことは何ですか?

多和田:以前は学長と同窓会が直接対話する機会はありませんでした。各学部の同窓会は学部の状況は分かりますが、大学全体のことは分からず、卒業生にも伝わりにくかったと思います。

髙 橋:それは大学も同じです。従前ですと、卒業生の声は学部の方へは伝わりますが、学長まで届きませんでした。卒業生はしっかり大学を見ています。厳しく、優しく、応援してくれていますので、卒業生からいただく意見は大変重要です。

多和田:大学の社会的な評価も卒業生の活躍によるところが大きいと思います。

髙 橋:そうですね。新潟大学の名が上がります。そして、良い学生が集まって、良い循環が生まれます。一方で、大学がしっかりしないと卒業生にも迷惑がかかります。

多和田:まさに大学と同窓会は一蓮托生ですね。

柳 本:最近の話題として、国立大学の財政問題があります。新潟大学の現状はいかがですか?

髙 橋:非常に厳しい状況です。ご承知のとおり運営費交付金は年々減額されています。政府予算における科学研究費等の競争的資金は増加しており、応募の機会も増え、使い勝手も良くなっています。しかし、運営費交付金の減少分を補うだけの競争的資金は獲得できていません。各種の助成金・受託研究費も含めて外部資金の獲得が伸びていない状況です。

多和田: 競争的資金を獲得できれば、獲得できなかった分野の研究費を捻出できますか?

髙 橋:そう単純ではありません。例えば、高額の競争的資金を獲得して大型の実験装置を導入するには、設置する施設・インフラの設備、実験をサポートする人材の人件費など、むしろ大学からの補助が必要になります。

全学同窓会長

多和田孝雄

1976(昭和51)年 歯学部卒

多和田:短期間では成果の出ない分野もあります。短期間で成果を出そうとして無理をした結果、さまざまな不正も起こって社会問題になっています。

柳 本:いわゆる“強い分野”とそうでない分野とのバランスはどうされますか?

髙 橋:大学の目指す方向をしっかり打ち出す必要があります。大学の目指す方向と合致していれば、学長裁量経費等の資金を充てて支援します。また、大きな外部資金を獲得すれば必ず間接経費が計上されますので、大学の財政も潤うことになります。ただし、恒常的に大型資金を獲得できるとは限らないので、運営費交付金減少の対策も必要です。これまでは、その対策が不十分でした。そこで、今年は予算の組み方を大胆に変えました。学長裁量経費は必要なところ、今は“弱い分野”でも新潟大学らしい特徴のある教育や研究に投入します。

柳 本:地域社会との関係はいかがですか?

髙 橋:大学は教育、研究、社会貢献が活動の三本柱です。この中で、社会貢献が少し弱いと認識しています。「ダブルホーム」という教育プログラムでは、学生と地域住民との交流が深まり、地域に貢献しつつ学生にも良い勉強になっています。医療をはじめ、教職員の仕事そのものが社会貢献になる場合もあります。足りないのは、受託研究・共同研究を通じた社会貢献で、企業との交流を広げ、深める必要を感じています。

柳 本:文部科学省は来年度から国立大学を「世界最高水準の教育研究」、「特定の分野で世界的な教育研究」、「地域活性化の中核」の3グループに分類するそうですが、新潟大学はどのグループになりますか?

新潟大学長

髙橋 姿

1976(昭和51)年 医学部卒

髙 橋:本学は「地域活性化の中核」グループとなります。現在の社会構造は太平洋側に偏っていますが、近い将来、さまざまな意味で複数路線、つまり太平洋側の社会機能を補完し、緊急時のバックアップ機能として日本海側のラインは重要になります。日本海側の大規模総合大学として、その中核を目指しています。

多和田:地域を限定した場合、大学の発展にとってマイナスになりませんか?

髙 橋:日本海側ラインを中心に東アジア・東南アジアまで視野に入れた環東アジアの地域圏を考えています。幸いなことに、本学はロシア、モンゴル、韓国、中国との交流もあります。

多和田:人口減少という地域の課題もあります。大学として何か対応を考えていますか?

髙 橋:本学の県内出身学生は約4割です。県外に就職する県内出身者もおり、新潟に就職する県外出身者もおりますが、約4割は新潟に就職しますので、転出入は拮抗している状況です。人口減少の問題で言えば、もっと人材を新潟に残す必要があります。地元への就職の働きかけだけではなく、インターンシップ等を通じて学生に地元の優良企業を知ってもらう取り組みが必要です。私自身も経済界の集まりに積極的に出席して大学の人材育成の考え方をお伝えし、また企業側のニーズを把握したいと考えています。

多和田:地元の行政との連携はどうなっていますか?

髙 橋:新潟県や新潟市、佐渡市、小千谷市、刈羽村と包括連携協定を締結しています。しかし、県で言えば、協議会が一度も開催されていません。先日、知事とお会いした際にも、協定を実質化したいとお伝えしました。もちろん多くの教員が各種審議会・委員会の委員を務められ、行政の活動に貢献しています。ただし、これらは教員の個人的な繋がりによるところが大きく、大学が組織的に取り組んでいるわけではありません。大学として優秀な人材を委員に推薦し、あるいは地域の発展に寄与するアイデアを提言にまとめるなど、組織的にも貢献したいと考えています。

柳 本:同窓会に対して何か要望はございますか?

髙 橋:全学同窓会にはご寄附もいただいており、深く感謝申し上げます。正課の教育に充てる予算も厳しい中、課外活動を支える資金の確保は難しくなっています。筋力トレーニングの設備や雪華支援事業は大学としても大変助かっておりますので、引き続き支援をお願いいたします。社会貢献にも外部資金の獲得にも繋がるため、受託研究・共同研究を推進する必要がありますが、実はここに本学の弱点があります。他大学と共同研究している県内企業に伺うと、本当は新潟大学と共同研究したかったとおっしゃいます。大学としてもニーズの発掘に努力しますが、同窓生に仲介していただけると助かります。

柳 本:全学同窓会から大学への要望はございますか?

全学同窓会相談役

柳本雄司

1963(昭和38)年 人文学部卒

多和田:同窓会への帰属意識の問題です。新潟大学卒業生としての仲間意識、同窓会への帰属意識は大学時代の学生生活が大きく影響すると思うのです。

髙 橋:その通りです。大学時代に良い仲間を得ると、卒業後も交流が続きます。今でも私はスキー部の仲間と妙高の池ノ平で2年に1回集まっています。同窓会への帰属意識の根幹となる仲間意識は充実した大学生活の中で生まれ、在学中に和が広がると思います。同窓会の温かいご支援をいただきながら、学生の活動を応援していきたいと思います。

多和田:最近は何事もランキングにする風潮ですので、良い学生を集めるためにも就職状況、資格取得状況など、情報をわかりやすく提供してほしい。

髙 橋:卒業生の活躍を知ると、良い受験生も集まりますし、在校生も教職員も誇らしい気持ちになります。帰属意識にも関係します。同窓会からも卒業生のご活躍をいろいろ教えてほしい。

多和田:そうですね。同窓会としても情報収集に努めます。

髙 橋:首都圏同窓会のバックアップもあって、首都圏では学生向けの就職ガイダンスもあります。私立大学は昔からこういう活動が強いですね。

多和田:ゆくゆくは私学にも負けない同窓会になるよう頑張らないといけませんね。

柳 本:この10年間、全学同窓会は新潟大学の最強のサポーターとなるべく努力してまいりました。これからは双方の直面する課題などについての情報共有も必要です。

多和田:意見交換の場として大学と全学同窓会の懇談会があります。しかし、大きい会なので、ややもすればセレモニー化してしまいます。今回のように、ざっくばらんにお話する機会があってもよいと思います。

髙 橋:テーマを絞って、少人数で意見交換する場を設けることは可能です。

多和田:新潟大学の発展に向けて、全学同窓会も微力ながらお手伝いしたいと思います。

柳 本:そろそろお時間のようです。本日はお忙しい中、貴重な時間を割いてくださり、ありがとうございました。

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