現・新潟大学あさひまち展示館(旭町学術資料展示館)

 新潟大学に残る最古の建物は旭町地区にある「新潟大学旭町学術資料展示館」です。昭和初期に、同窓生の多額の寄付により「新潟師範学校記念館」として建設されました。新潟市に現存する最古級の鉄筋コンクリート建造物として国の登録有形文化財にも指定され、市内の観光スポットにもなっています。

斎藤寿一郎
新潟大学全学同窓会理事
教育人間科学部同窓会
斎藤寿一郎


 師範学校記念館は、昭和4年に、教育人間科学部の母体である新潟師範学校同窓会により、初等教育の研究所として建設されました。母校の50周年記念事業として、「雨覆運動場」と「記念文庫」の贈呈に加え、「永久的なもの」として「母校の栄光に酬いる唯一の贈物」として取り組まれました。教師の資質を向上させ教育環境を整備し、時代を担う子どもを育てるという理念は普遍的なものですが、その理念に適う記念館建設は、多くの人々の心をとらえ、賛同者の輪を拡大させていく原動力になったと考えられます。同窓生をはじめ県内外の政財界関係者や地域から物心両面にわたり強力な支援を受けました。崇高な建設理念を示した同窓会先達の先見性と熱意を感じとることができます。当時の新聞は、建設計画や設計、落成の様子を詳細に報じており、地域社会が抱く記念館建設への関心と期待の大きさを窺うことができます。
 記念館は、現在、新潟大学旭町学術資料展示館として、78年前の建設理念を受け継ぐかのように上手に活用されています。やや手狭で関係者が苦労されていると聞きますが、幸運にも取り壊されることなく残った建物は、歴史の生き証人として、同窓会の社会的な存在意義とは何かについても問いかけているように思います。先達が示された「永久的なもの云々」を、未来を展望した、歴史的に有為な、大学の発展に貢献する同窓会活動、と受け止めます。今後、より充実した同窓会活動を目指すには、真のパートナーシップの構築を図ると同時に、同窓会と新潟大学との連携方法を更に工夫する必要があります。記念館が我々に語りかけるものは極めて大きいと思います。
新潟新聞 昭和4年6月25日記事より
記念館の建設は、当時、一大事業として注目され、
新聞等で繰り返し取り上げられた。(新潟新聞 昭和4年6月25日記事より)
現在の記念館
現在の記念館
(当初、一階を児童教育のための陳列室、二階を集会室とした。会議室や屋上からは、新潟市街を一望できた。今となっては小さく見えるものの、趣のある建物が周囲の景観に溶け込んでいる。後方の木造部分は取り壊され現存しない。平成19年初春に撮影。)