特集 新潟大学の産学連携・社会連携

地域創生推進機構の設置
科学技術・学術を通して、新しい暮らしやコミュニティーを創生します

新潟大学
地域創生推進機構長

川端 和重

 新潟大学は、「アカデミアの中の大学」から「社会の中の大学」へ、おおきな改革を進めています。その一環として、産学連携部門、社会連携部門、知的財産部門、ビジネスプロデュース室(以下、BP室)からなる地域創生推進機構を設置いたしました。研究活動の発信にとどまらず、地域社会や企業と積極的に新たな連携を企画提案・協働推進を行うプロモーター集団の組織です。

 研究成果を社会実装するために、本学では「共同研究講座(部門)制度」を作りました。さらに、産業界や地域からの窓口を地域創生推進機構に一本化し、企業等が安心して本学に投資・協働できるようにしました。この制度を活用する企業は増えており、数年で共同研究費が2倍近くに増加しました。

 新潟県内には人材流出や高齢化・過疎化等に悩まされている地域があります。本機構は、関係する自治体や国機関等とも連携し、地域の歴史ある個性を発揮させるために、新しい地域コミュニティーの創生を目指す活動も展開しています(例えば、中山間地農村コミュニティー(佐渡里山エリア)、ものづくり産業コミュニティー(燕三条エリア)、新潟酒蔵コミュニティー等)。単なる先端科学技術の導入や企業誘致ではなく、地域の方々との対話を通して、地域が持続的な発展を生み出すための活動を総合大学としての文理の知とネットワークを駆使して進めています。同窓生の皆様にも、ご理解とご支援をいただきますようお願いいたします。

燕三条医工連携の取り組み

 BP室は、地域の企業、自治体、金融機関等で構成されるコンソーシアムにより新たなビジネスの創造、製品開発等を支援することを目指しています。その中でも2019年2月より開始されました「燕三条医工連携事業」と「燕三条医工連携コンソーシアム」は、参加企業が40社以上、開発に着手している製品数が11となっています。さらに2020年4月に新潟商工会議所とも同じ医工連携事業に関する共同研究開発契約を締結しました。

 医工連携事業では、世界ブランドである燕三条の金属加工業の将来を見据え、新たな医療関連製品を開発するという方向性が産業側、大学側とで一致しました。実際に製品を本学医歯学総合病院で評価するような場合に必要な倫理審査委員会の手続き等もBP室と関連部局が連携し、承認・実施の流れを実現するようにしています。企業からは、「想像以上に速いペースで販売に向けた取り組みができる」等の評価をいただいています。

 世界ブランドの燕三条の企業でもリクルート活動では苦戦しています。本プロジェクトは大学生向けのデザインコンペを開催し、大学生の企業・工場見学も実施しています。

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里山創生「佐渡モデル」の構築

 BP室は、医工連携事業の他、文部科学省のDESIGN-iプロジェクトを担当しています。新潟大学と佐渡市による佐渡島の地域社会課題解決を目指し、2019年度より文部科学省DESIGN-iプロジェクト(科学技術イノベーション(STI)による地域社会課題解決)の採択を受けました。本プロジェクトを通じて、地域の活性化に寄与し、地域に貢献することを目指しています。本プロジェクトは、里山創生「佐渡モデル」の構築を目指し、里山地域で生物多様性と農業技術革新が共存するエコロジカル・コミュニティのモデル構築を目指しています。2019年度の取組は、各農業集落での対話等による地域の未来ビジョンや課題の設定、解決策の仮説の設定・検証等です。20年度以降、持続的・発展的な取組とするため、専任の組織新設やスタッフを配置し、新たなPJ基金を立ち上げました。その概要については、こちらをご覧ください。

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大学との共同研究

 人材不足が共通かつ最大の課題である現在、どの企業も優秀な人材を確保したい、また、先進の技術を安く・早く手に入れたいと考えています。先進技術の知見をもつ大学の研究者と一緒に共同で研究することは、それらを実現するひとつの重要な手段です。

 新潟市にある㈱ニューメディア新潟センターと本学は、「画像処理技術による交通量推定に関する研究」を約1年半かけて実施しました。ケーブルテレビで既に配信されている道路のライブカメラ映像から、車の速度を自動計測し、通常/混雑/渋滞という渋滞情報として付加することで、より地域に根付いたサービスを実現しました。企業側だけでは開発できなかった高度なサービスを、大学が保有している先進の画像処理技術で短期間に実現し、企業のサービスの付加価値を高めた事例です。

 他にも多くの共同研究事例があり、企業からは、「我々の思いつかないような技術があり、それらを使わせていただくことで、スピードアップと解析精度の両立が達成できつつあります」、「企業内で保有しない技術を産学連携で得ることができ、早期の開発を実現しました」等の良好な評価をいただいています。

「つながる研究」(シーズ集)~課題解決のきっかけに!近くにあった研究と人材~

 2019年3月、新たに「『つながる研究』紹介2019年版」冊子を作成しました。本学の多分野にわたる研究の中から、全国の産業界・企業が抱える技術的課題や新潟県をはじめ各自治体等が抱える地域課題の解決に資する『つながる』研究内容(97件)と併せ、連携も求める研究者を紹介しています。さらに、2020年3月には、2019年追加版(76件)を作成し、現在も拡充に努めています。様々な企業・自治体等と研究者のつながりを支援し、新たな付加価値や製品・サービスの創出、生産性向上のお手伝いをいたします。本冊子は、企業の方々や、自治体等の方々に、本学の研究概要を理解していただき、課題解決への可能性を感じていただくために、読みやすく、わかりやすい内容と体裁にいたしました。

  • 本学との共同研究に関しては、こちらをご覧ください。
  • 新潟大学産学連携協力会に関しては、こちらをご覧ください。
  • 「つながる研究」の紹介は、こちらをご覧ください。

掲載している研究にご興味をお持ちになりましたら、下記までお問い合わせください。

新潟大学地域創生推進機構ワンストップカウンター
TEL:025-262-7554
E-mail:onestop@adm.niigata-u.ac.jp