佐渡自然共生科学センター -3施設の特色-
森林領域・演習林

施設の特徴

佐渡自然共生科学センターの演習林は全国で唯一、島嶼に位置しています。佐渡市小田に研究・宿泊(最大収容人数40名)施設である佐渡ステーションを置き、その東約 5 km 先の山中に教育や研究の場としている森林(演習林)を有しています。演習林は、大佐渡山地北部の稜線沿いに約500haの面積を有し、その大部分は標高600m以上にあります。また海からの湿った風によって、高い頻度で霧や雲で覆われています。自然度の高い森林内には、約500種の植物や、多数の動物・菌類が生息しています。

目的

森林科学の研究や教育(学生の実習など)の実践を目的として設置されました。最近は、教育関係共同利用拠点として幅広く全国の大学に利用の門戸を開き、将来を担う大学生の教育に貢献することを目的としています。

活動状況

1955(昭和30)年、新潟県より県有林を無償譲渡していただき、佐渡演習林は発足しました。2019年4月現在、教員4名、大学院生6名、学部生9名が所属し、調査・研究活動を行っています。島嶼に特有の生態系・自然環境の特性を活かし、森林科学・生態学に関わる各種の学生実習や多様な調査・研究、継続的な気象観測や森林動態モニタリングなどを行っています。
2018(平成30)年度の学内からの利用は延べ人数977人、他大学共同利用実習も計17件ありました。他大学等の利用機関数は34校、利用延べ人数は760人でした。合計で1,737人に達しました。国際的な実習にも力を入れており、海外の学生を対象とした実習は3件、利用機関数は7件、計10か国からの利用がありました。

スギ天然林 佐渡ステーション(演習林)の利用状況
里山領域・朱鷺自然再生学研究施設

施設の特徴

本施設には、トキの再導入の実現をめざした「再導入生物学研究室」、里山の生物多様性を解明し復元方法を研究する「生物多様性・生態系復元研究室」、地域の参加と協同による環境共生社会を目指した「環境社会システム研究室」があります。本施設には、教職員居室の他に調査試料分析室、作業室、セミナー室、共同研究室があります。また、教育研究フィールドとして、新穂キセン城地区で放棄された約100枚の棚田(30ha)をビオトープとして復元し、自然再生の技術開発、自然再生人材の育成、絶滅危惧動植物の保全手法の研究等を行っています。

目的

里地里山の自然再生には、開発で失われた自然環境、農地の荒廃・鳥獣害により劣化した生態系の復元、外来生物の駆除、及び自然と共存可能な地域社会の復元も含まれているため、佐渡の生物多様性の復元手法およびトキと共存するための共生社会を提案する“佐渡モデル”の確立を目指します。また、他の地域にも適用可能な、学際的な環境科学としての「里地里山の自然再生学」の構築を目指しています。

活動状況

研究活動から得られた学術的知見を地域に還元するため、佐渡の自然再生と地域活性化を担う幅広い人材の養成に取り組んできました(H22-26年度科学技術振興調整費地域再生人材創出拠点の形成「朱鷺の島環境再生リーダーユニット」)。H27年度からJST後継事業として「朱鷺の島地域再生人材創出事業」を立ち上げ、さらなる人材育成に取り組むとともに、自然再生を実現する地域社会モデルの構築に向けた実践的研究活動も進めています。また、新潟大学の教養教育に関する科目として、トキの野生復帰を軸とした自然再生の取り組みを通して地域の未来像を考える講義、「トキをシンボルとした自然再生」と実際に自然再生現場を体験する実習、「朱鷺・自然再生フィールドワーク」を開講しています。また、野外実践科学人材育成プログラムの専門教育として「里地里山再生学」、「希少生物保全学」、「自然再生学実習」を開講しています。

朱鷺・自然再生学研究施設居室 キセン城での朱鷺・自然再生フィールドワーク実習風景
海洋領域・臨海実験所

施設の特徴

佐渡島には様々な海岸環境があり、夏季には対馬暖流の影響を、冬季には寒流や冷たい季節風の影響を受けるため、暖海性と寒海性の両方の生物が出現します。これらの特徴により、佐渡島では多種多様な海洋生物が見られます。
本実験所は海洋教育のための実習用設備と研究機器を備えています。主には、自然海水およびろ過海水を常時かけ流し可能な水槽19基を有する水生生物飼育室、実習船2隻、光学・実体顕微鏡モニタシステム等の最新鋭の研究機器、最大42名収容可能な宿泊施設を有します。佐渡島近海で採集された海洋生物標本約4,000点を収蔵する標本室もあります。

目的

佐渡島に残されている豊かな自然環境と生物相を利用して、海洋生物の多様性や生態、環境適応、進化発生などについての高度な教育・研究を行っています。また、森林領域/演習林、および里山領域/朱鷺・自然再生学研究施設と連携して、森里海生態系の構造と機能についての高度な知識と見識をもった人材を育成しています。

活動状況

全国の大学生・大学院生向けの臨海実習を開催しています。2013年度より文部科学省の教育関係共同利用拠点として、海洋生物の多様性と生態系の機能を総合的に理解する高度なフィールド教育プログラムを国内外の大学に提供しており、2018年現在、年間利用人数は延べ約1,600人に達しました。
小・中学生や高校生、理科教員、一般の人を対象にした臨海実習や体験学習、出前授業、研修なども行っています。主にアジア圏の国や地域からも教員や学生を招いて、温帯域の海洋生物の多様性と生態について学ぶ国際臨海実習を毎年実施しています。

実習船での調査 留学生の国際臨海実習
プランクトン採集