佐渡自然共生科学センターの設立 ─ 森・里・海の学際的環境科学の研究拠点 ─

本年4月に佐渡自然共生科学センター(以下、センター)が設立されました。
センター長を務める崎尾 均先生にお話を伺いました。

―設立の経緯を教えてください。

もともと佐渡島には農学部附属フィールド科学教育研究センター佐渡ステーション(演習林)、理学部附属臨海実験所、朱鷺・自然再生学研究センターの3つの学外施設がありました。これらの3施設を統合して、研究分野を横断した学際的な環境科学の研究拠点とするために設立されました。

―佐渡島にセンターを設置する意義、佐渡の魅力は何でしょうか?

佐渡島には森・里・海の環境が集約されています。森里海の豊かな自然が隣接しており、それぞれの環境が河川をとおして繋がっています。森里海を舞台に自然を科学する総合的な教育・研究を行うには絶好のフィールドと言えます。また、佐渡には特有の伝統・文化が継承されています。人々が長年の暮らしの中で、地域の自然環境を理解し、自然と共生し、生物多様性を維持しながら伝統・文化を築きあげてきた魅力あふれる地域です。

―生物多様性維持の必要性とは?

人間の生活は食料や水をはじめとして、さまざまな自然の恵みに支えられています。この恵みは生物多様性を基盤としており、「生態系サービス」と呼ばれています。佐渡島は生物多様性の高いことでも知られています。佐渡の固有種や希少生物が存在する自然環境も貴重ですが、江戸時代からのスギ天然林の保護、林間放牧による半自然草原、里山の薪炭林や水田、暖流と寒流の影響による豊かな海産生物など、歴史的に「生態系サービス」を持続的に利用しつつ、生物多様性を維持してきた地域と言えます。その意味でも自然共生科学の研究成果を地域に役立てたいと考えています。

―教育研究を通じた人材育成について教えてください。

自然共生科学の教育研究をとおして、生物多様性に関する高度な知識を持った人材を育てたい、そして社会の幅広い分野で活躍できる人材に育ってほしいと願っています。例えば、研究者、調査会社の専門技術者、環境行政に関わる公務員のみならず、マスコミや観光業、その他さまざまな職種でも専門知識や経験は活かせると思います。また、佐渡は、我が国や環東アジアに共通する社会的課題を抱えています。佐渡での教育研究をとおして、社会的な課題についても目を向ける広い視野が養われることを期待しています。

―地域貢献、国際交流はいかがでしょうか?

地元の人々と協働してつくりあげるシチズン・サイエンスを展開しています。その一例として、佐渡市と連携して、世界農業遺産、ジオパーク、トキに関連するツーリズムのガイド教育など、地元の取り組みを支援しています。
演習林と臨海実験所は文部科学省教育関係共同利用拠点であり、全国の大学のフィールド教育を広く受け入れています。また、海外の大学からの学生の実習も受け入れています。参加人数も増加しており、こうした取り組みをもとに、国際共同研究の実施や協定の締結に繋げたいと考えています。
社会との接点において、同窓会の皆様からも様々な機会を通じてご協力ご支援いただけると大変助かります。

―すばらしいセンターに発展しそうです。本日はありがとうございました。

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